日本における法制度の現状

1.法律の現状

(1) 日本の法律はどうなってるの?

日本の法律では、結婚は男女間に限られていると考えられています。たとえば日本国憲法24条には、結婚が「両性の合意」のみにもとづいて成立すると書かれています。この「両性」という言葉は、一般的に一人の男性と一人の女性を指すものと考えられているので、日本では結婚が男女間のものと考えられているのです。家族や社会保障に関係する他の法律をみても、そこでは「夫」「妻」、「父」「母」といった異性カップルを指す言葉が使われています。婚姻届にも左側に「夫となる人」、右側には「妻となる人」の記入欄があり、「夫となる人」には戸籍上の男性、「妻となる人」には戸籍上の女性しか記入することができません。性同一性障害者特例法でも、性別を変更する条件のひとつに「現に婚姻をしていないこと」が規定されています。結婚したままで戸籍の性別を変更すると法的に同性同士の「夫婦」という位置づけになるため、これを避ける目的で入れられた条件なのです。

(2)国や役所はどう考えてるの?

国も役所も、結婚は男女間に限られているとみています。たとえば法務省は、外国で結婚する場合にときどき必要となる「婚姻要件具備証明書」のひな形に、2002年から相手の性別を記載する欄が新設しました。これは同性間でも結婚できる国(当時はオランダのみ)が出現したために、日本での混乱を避けるために付け加えられたものです。また、出入国審査で使われる『入国・在留審査要領』では、配偶者ビザの発給対象が法律婚をした異性カップルに限られています。外国で有効に結婚した同性カップルや事実婚の異性カップルは対象外としてわざわざ明記されているのです。ただし、大阪府のように公営住宅に同性カップルとしての入居を認めている自治体もあります。

(3)裁判所はどう考えてるの?

裁判所では、結婚が異性カップルに限られるかどうか、正面から争われた例はみあたりません。ひとつの考え方が示されたものとして、外国籍のMtFの女性と、その事実を知らずに結婚した日本国籍の男性との結婚関係が無効と判断された裁判例があります。この判決の中で裁判所は、「男性同士ないし女性同士の同性婚は、男女間における婚姻的共同生活に入る意思、すなわち婚姻意思を欠く無効なもの」と述べています。ただし、配偶者間暴力防止・被害者保護法(いわゆるDV法)の対象となる事実婚カップルに、女性同士のカップルが含まれると判断された例も知られています。

2.現行法上の選択肢と問題点

(1)成人間の養子縁組制度を利用する

日本では、成人同士では、とても簡単に養子縁組をすることができます。条件としては年長者が養親になれなければならないことくらいで、年齢差にも制限はなく、裁判所の許可も必要ありません。法律上は親子関係になってしまいますが、親子という「家族」になることで、相続や社会保障などを受けることができるようになります。ただ、これは厳密には制度の趣旨から外れる使い方ですので、トラブルになった時には、他の親族から養子縁組の無効確認が提起されることも考えられ、安定した関係とはいえません。

(2)公正証書を利用する

公正証書は、法律の専門家である公証人が作成する、高い証明力をもつ公文書です。「共同生活と遺言に関する合意書」のような形で、お互いの財産の権利関係や相続、万が一の時の医療行為への同意権などの合意を公正証書にすることができます。これを専門的に仲介する法律事務所もあり、利用件数は年々増加しています。ただ、この公正証書が社会生活の上で、とくに第三者に対してどれだけの効力をもつのかはあいまいなので、結婚することとは大きな隔たりがあります。

3.法的保障に向けた動き

(1)どれくらいのニーズがあるの?

日本における同性カップルの生活実態や法的保障のニーズについては、これまでいくつかの調査が実施されてきました。代表的なものとして、「同性間パートナーシップの法的保障に関する当事者ニーズ調査」(血縁と婚姻を越えた関係に関する政策提言研究会)、「310人の性意識―異性愛者ではない女たちのアンケート調査」(性意識調査グループ)、「同性パートナーのニーズ調査」(RT2006調査プロジェクト)などがあります。

(2)議論の盛り上がりは?

同性同士のパートナーシップに対する法的保障については、さまざまな場面で議論がなされてきました。こういった先輩たちの思いを引き継ぎながら、パートナー法ネットワークとしての活動も盛り上げていきたいと思います。