特別配偶者法が存在しないことによる生活上の問題

現在の日本では、同性間のパートナーシップを法的に保障するしくみが存在しません。そのことに伴う生活上の問題を、いくつか見てみましょう。

【財産】

まず、同性カップルの共同財産について、カップルの片方が亡くなった際に、現状では生き残ったパートナーに対する法定相続権が認められていません。遺言(いごん)に基づいて、残されたパートナーへ財産を遺贈(いぞう)することも可能ですが、その際も亡くなった人間の親や子は一定の相続分(法律上、「遺留分」と呼びます)を法的に主張できます。そのため、故人と実質的なパートナーシップを営んでいながら、残された同性パートナーは不利な立場に置かれがちです。なお、カップルで同居をしている際に、亡くなった人が単独で住宅の所有/賃借名義人である場合、残されたパートナーによる所有権/賃借権の承継が認められない危険性があります。その結果として、残されたパートナーが住む場所を失うケースもあります。

【公営住宅】

また、都道府県営住宅や市営・町営・村営住宅を規定する公営住宅法では、入居資格として「現に同居し、又は同居しようとする親族があること(婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者その他婚姻の予約者を含む。以下略)」と決められています(公営住宅法 第 23 条 1 号)。親族関係や婚姻が前提となっているこの規定のため、法律上「赤の他人」である同性カップルは現在、公営住宅に入居することができません。

【医療機関】

さらに、大きな病気や怪我による入院や手術などの重大な治療を受ける場合、法律上の家族(配偶者や親・子など)には面接権や医療上の同意権などが通常認められています。しかし、法律上の家族ではない同性のパートナーに対しては医療機関により対応がまちまちです。最悪の場合、同性パートナーに対する上記の面接権や医療上の同意権などが、医療機関によって拒否されるケースも存在します。

【民間企業によるサービス】

この他にも、民間企業によるサービスが法律上の家族や婚姻カップルを対象としている場合、同性カップルがサービスを受けられないケースが存在します。例えば、婚姻している男女カップルが住宅を購入する場合、多くの金融機関が提供する住宅ローンでは、カップル2人の合算収入に基づいて融資額が決まります。しかし、同性カップルの場合はカップル2人の収入が合算されません。その結果、同性カップルと婚姻している男女カップルがともに共働きである場合、融資を受けられる額において、婚姻している男女カップルに対して同性カップルは不利な状態に置かれています。

以上のように、法的保障の不備が同性カップルに対してもたらす生活上の不利益や不便は、非常に広範囲かつ大きなものであり、法制度の整備による解決が必要とされる所以です。